江戸時代後期、大坂の豪商・鴻池家は、幕府や諸藩からの信頼も厚く、財力も絶大だった。その秘密は、屋敷に祀られている大黒様にあった。鴻池家の先祖は、初代善右衛門正成が若い頃、山中で出会った不思議な老人から授かったという。その老人は、実は大黒様の化身であり、正成に富と幸運をもたらす大黒様像を与えたのだった。以来、鴻池家は代々その像を厳重に守り、大黒様に感謝と供物を捧げ続けた。そのおかげで、鴻池家はどんな困難にも打ち勝ち、繁栄を続けたのだった。

しかし、幕末になり、世情は激変する。幕府や諸藩は借金を返せずに窮地に陥り、鴻池家もその影響を受ける。さらには、尊王攘夷派の志士たちが鴻池家を狙い始める。彼らは鴻池家が持つ財力や情報を利用して幕府打倒を目論むのだった。そして、その中には鴻池家の大黒様像を奪おうとする者もいた。彼らは大黒様像が不思議な力を持つことを知っており、それを自分たちの目的に利用しようとしたのだった。

そんな中、鴻池家の当主・十代善右衛門幸富は、幕府や諸藩との関係を調整しながら、大黒様像を守るために奮闘する。しかし、幕府や諸藩の要求は過酷であり、志士たちの攻撃も激しくなる。やがて、鴻池家は危機に陥る。幸富は、大黒様像を守るべきか、それとも手放すべきか、苦悩する。そして、大黒様像に対する自分の思いと、家族や家来たちの命とを天秤にかけることになる。果たして、幸富はどう決断するのか。そして、大黒様像の運命はどうなるのか。それは、鴻池家の過去と未来を揺るがす物語であった。

幸富は、大黒様像を守ることを決意する。しかし、志士たちの襲撃により、屋敷は火事になり、大黒様像も焼失してしまう。幸富は家族や家来たちとともに逃げ延びるが、鴻池家の繁栄は終わりを告げる。しかし、幸富は大黒様像を失ってもなお、大黒様への感謝と信仰を忘れない。そして、明治維新後に新しい時代に適応し、鴻池家を再興することに成功する。その際には、新たな大黒様像を作り、屋敷に祀る。それは、先祖から受け継いだ大黒様への敬愛の証であった。