ある日、とある港町に一人の旅人がやってきました。彼は長い間、世界中を旅してきた冒険家で、今回は日本にやってきたのでした。彼は港町の宿に泊まり、町の人々と親しくなりました。彼は好奇心旺盛で、町の歴史や文化に興味を持ちました。

ある晩、彼は宿の主人と話をしていると、福猫島の話を聞きました。宿の主人は昔、祖父から聞いた話だと言いました。福猫島は太平洋に浮かぶ幻の島で、招き猫たちが住んでいるという話です。彼らは人々の願いを叶える力を持っていると言われていますが、島に行くことができるのは心が純粋で善意に満ちた人々だけだと言いました。

冒険家はその話に興味を持ちました。彼は自分も心が純粋で善意に満ちていると思っていましたし、招き猫たちに会ってみたいと思いました。そこで、宿の主人に島への行き方を尋ねました。宿の主人は少し困った様子でしたが、彼に教えてあげることにしました。

「島への行き方は簡単ではありません。まず、明日の朝早くに港へ行ってください。そこで一番小さな漁船を見つけてください。その船に乗ってください。船頭はあなたがどこへ行きたいか聞かないでしょう。あなたは何も言わずに乗ってください。そして、船頭が言うまで降りないでください」

「それだけですか？」

「それだけです。ただし、一つだけ注意してください。船頭が言うまで降りないことです。もし途中で降りようとしたら、島は見えなくなります」

「わかりました。ありがとうございます」

冒険家は宿の主人に礼を言って部屋に戻りました。彼は明日の朝が待ち遠しかったです。

翌朝、冒険家は早起きして港へ向かいました。港では多くの漁船が出港する準備をしていました。冒険家は一番小さな漁船を探しました。やがて、彼は見つけました。それは小さくて古びた木造の船でした。船頭は白髪の老人でした。

冒険家は船頭に声をかけました。

「おじいさん、この船に乗せてもらえますか？」

老人は冒険家をじっと見ました。そして、何も言わずにうなずきました。

冒険家は船に乗り込みました。老人は帆を張って出港しました。

冒険家は海を眺めながらワクワクしました。果たして福猫島に行けるのだろうか？招き猫たちに会えるのだろうか？彼は心の中で願いました。福猫島に行きたいと。

船はしばらく港から離れたところで停止しました。老人は冒険家に言いました。

「ここで降りてください」

冒険家は驚きました。周りには何も見えませんでした。ただ水と空だけでした。

「どこに行くんですか？」

「あなたが行きたいところに行くのです」

「でも、何も見えませんよ」

「見えるようになります。信じてください」

老人は冒険家を船から降ろしました。冒険家は水の中に立ちました。水は彼の膝までしかありませんでした。

「じゃあ、またね」

老人はそう言って船を出発させました。冒険家は船が遠ざかるのを見送りました。

彼は一体どうなるのだろうと思いました。彼は周りを見回しましたが、何も変わりませんでした。ただ水と空だけでした。

彼は不安になりました。もしかしたら、宿の主人や老人は彼を騙したのではないかと思いました。彼は島への入り口を隠すために、彼をこの場所に置き去りにしたのではないかと思いました。

彼は怒りました。彼は裏切られたと感じました。彼は叫びました。

「おい！戻ってこい！これは何だ！嘘つきめ！」

すると、突然、水が揺れ始めました。波が高くなりました。風が吹き始めました。空が暗くなりました。

冒険家は恐怖を感じました。彼は何が起こっているのか分かりませんでした。彼は波に飲まれそうになりました。

すると、彼の目の前に光が現れました。それは小さな招き猫の形をしていました。招き猫は冒険家に微笑みかけて言いました。

「こんにちは、私たちは福猫島の住人です。あなたが島に来たいと願ったので、私たちはあなたを迎えに来ました」

「え？本当ですか？」

「本当ですよ。でも、あなたは心が純粋で善意に満ちていると思っているけど、実はそうではありませんね」

「どういうことですか？」

「あなたは自分勝手で欲張りで傲慢です。あなたは島に来ることができると思っていますが、それは間違いです。あなたは島に来る資格がありません」

「そんなことありません！私は心が純粋で善意に満ちています！」

「そう言っても無駄ですよ。あなたの心の中を私たちは知っています。あなたは島や招き猫たちに興味を持っていません。あなたはただ自分の欲望を満たすために来ただけです」

「違います！私は本当に島や招き猫たちに会いたかっただけです！」

「嘘つきですね。あなたは宿の主人や船頭を信じていませんでしたね。あなたは彼らを騙したと思っていますね。

「あなたは彼らに感謝の気持ちもありませんでしたね。あなたは彼らを利用しただけです。あなたは自分のことしか考えていません」

「そんなことありません！私は感謝しています！私は彼らを利用していません！私は自分のことだけでは考えていません！」

「言い訳ですね。あなたは自分の心を騙しています。あなたは自分に正直になれません」

「やめてください！私を責めないでください！私は悪くありません！」

「あなたは悪い人ですよ。あなたは島に来ることができません。あなたは島から追い出されます」

「いやです！島に行きたいです！招き猫たちに会いたいです！」

「無理ですよ。あなたはもう遅すぎます。あなたは島を見ることもできません」

「どういうことですか？」

「見てください。島は消えました」

招き猫が指さした方向を見ると、冒険家は驚愕しました。そこには島の姿がありませんでした。代わりに、巨大な波が迫ってきていました。

「これがあなたの末路です。さようなら」

招き猫は冒険家に手を振って消えました。冒険家は波に飲み込まれました。

その後、彼の消息は知れませんでした。