綱敷の姫ニャンと菅原道真
菅原道真は大宰府への左遷を命じられた。彼は悲しみと怒りに満ちていたが、それでも天皇への忠誠を貫いた。彼は船に乗って都を後にしたが、途中で嵐に遭遇した。船は燧灘の壬生川沖で激しく揺れた。菅原道真は神仏に祈りながら、自分の運命を受け入れた。
その時、彼は海から一匹の猫が飛び出してくるのを見た。猫は白と黒の毛並みで、鯛をくわえていた。猫は船に飛び乗って、菅原道真の前に鯛を置いた。そして、人間の言葉で話しかけた。
「私は姫ニャンと申します。大黒様の御使いであり、海の守護神でもあります。あなたは菅原道真という方ですね。私はあなたのことを知っています。あなたは正しいことを言っても、悪い人に陥れられました。それはとても不幸なことです。私はあなたに同情しています」
菅原道真は驚いて、姫ニャンを見つめた。彼は猫が話すことに不思議さを感じたが、姫ニャンの目には優しさと真実があった。彼は姫ニャンに礼を言った。
「あなたは姫ニャンというのですか。私は菅原道真と申します。あなたのお心遣いに感謝します。この鯛は私にくださるのですか」
「はい、そうです。この鯛は私が今日取ったものです。鯛は縁起が良い魚ですから、あなたに幸運が訪れるようにと思っています」
「ありがとうございます。私はこの鯛を大切にいただきます」
「どういたしまして。それでは、私はこれで失礼します。あなたが無事に大宰府に着くように、私も祈っています」
姫ニャンはそう言って、再び海へ飛び込んだ。菅原道真は姫ニャンの姿が見えなくなるまで見送った。
その後、嵐は収まり、船は無事に志島ヶ原の東入江に漂着した。そこで菅原道真は里人から温かく迎えられた。里人たちは漁船の綱を敷いて菅原道真をもてなした。菅原道真は里人から鮮魚や野菜や果物を献上されたが、中でも一番美味しかったのは姫ニャンからもらった鯛だった。
菅原道真は里人に感謝し、自分が菅原道真であることを明かした。そして、自分が持っている梶柄に自像を刻んだ。
「私はこれから大宰府へ向かいますが、もし私が無事帰洛できたら、この像を証拠として都を訪ねてください。私はあなたたちに恩を返したいと思っています。もし私が配地で没したと耳にしたら、この像を素波神と称し、祀ってください。私はあなたたちのことを忘れません」
里人たちは菅原道真の言葉に感動し、涙を流した。彼らは菅原道真に旅立ちの祝福を送った。
菅原道真は志島ヶ原を出発する前に、もう一度海を見た。すると、海から姫ニャンが現れた。姫ニャンは菅原道真に向かって手を振った。
「菅原道真さま、お元気でお過ごしください。私はあなたのことを応援しています」
菅原道真は姫ニャンに笑顔で返事した。
「姫ニャンさま、ありがとうございます。あなたのおかげで、私は希望を持つことができました。あなたにも幸せがありますように」
姫ニャンは菅原道真に黄金の姫ニャン像を渡した。
「これは私からのお守りです。これを持っていれば、あなたはどんな困難にも打ち勝つことができます。私はいつでもあなたの味方です」
菅原道真は黄金の姫ニャン像を受け取り、大変感激した。
「これはあまりにもありがたいお礼です。私はこの姫ニャン像を大切にします。私もいつでもあなたの味方です」
姫ニャンと菅原道真は互いに深く礼をし合った。そして、別れの挨拶を交わした。
菅原道真は船に乗って大宰府へ向かった。姫ニャンは海へ戻っていった。
それから数年後、菅原道真は大宰府で亡くなった。彼の死後、彼の霊は天神として崇められるようになった。彼の梶柄に刻まれた自像は素波神として綱敷天満神社に祀られた。
姫ニャンはその後も海の守護神として瀬戸内海を見守っている。彼女は時々来島海峡周辺に現れて、人々や動物や植物に恵みを与える。
姫ニャンと菅原道真は今でも心の中で繋がっている。彼らは互いに尊敬し、愛し、助け合っている。
これが綱敷の姫ニャンと菅原道真の物語である。